レッテル
「なんか…今日はどっとつかれたな…」
と、またため息をついた。
しばらくすると、卯月は顔をはっと上げ、「いけない、いけない」と顔を叩いた。
もうすぐで掃除終了チャイムがなってしまう。
その前に早く教室に戻らないと!
「よっし!」
私は変に気合いを入れ、ごみ箱を持ち、勢いよく走り出した。
校舎に入り、チーターのようなスピードで集中玄関をぬけ、階段を駆け登る。
理科室は3階にあり!、と渡り廊下を駆ける。
あとは曲がり角を曲がり階段をのぼり、右から2つ目の教室へ入ればミッションはクリアだ。
だがしかし、このミッションを成功させることは出来なかった。
ドォン!
額が柔らかいものに当たり、ごみ箱は手から離れすっとんでった。
「いっ…たあ…」
私はそのやわらかいものから額をはなし、手でさすった。
「いってぇな、オイ」
その声が卯月のてっぺんより上から聞こえた。
私は顔をあげる。
栗色の、触ると溶けてしまいそうな髪。
前髪の隙間から見える大きな目も透き通ってる。
これも由比から聞いた話だ。
うちの学校には容姿、成績、運動申し分ない奴がいるらしい、と。
でも物凄く性格がひん曲がってるらしい、と。
まるで一匹狼だ、と。
その名は高瀬直樹というらしい、と。
ぶつかった相手はその噂の高瀬直樹だった。「す、すみま、せん」
私は足が2、3歩後ろに下げた。
高瀬直樹の噂には、顔が青ざめるような恐ろしい噂もある。
隣校の3年をぶったおしたり、射殺、刺殺、撲殺、毒殺しただとかいう噂があとをたたない。
そんなおっかない奴にぶつかったなんて…!この世とはおさらばだ。
悔いなんてありまくりだ。
だって吹っ飛んでったごみ箱だってまだ理科室にかえしてないし。
来週に由比とカラオケ行く予定だし。
こんな死に方あるか!
私はすっとんでったごみ箱を引っつかみ、逃げるように高瀬から逃げてった。
これでもう大丈夫!
しかしここで気を抜きすぎたのがだめだった。
前にすすめないのだ。
そのかわり、スカートのプリーツが乱れ、後ろに引っ張られていた。