三日月ロマンチカ 【短編】
ゴロ、ゴロゴロッ…
耳触りなあの音が、暗雲たちこめる空に轟いた。
「っ!!!か、雷かこのやろー!!おっおれは負けねぇぞ!!」
怖いわけじゃない。
…ゴロゴロゴロ…
もう一度言う、…怖くなんかねぇんだからな!!!!
ただなんつーかほら、あの音ってこう突然なんの前触れもなくいきな
ピシャァァァンッ!!!!
「ぎゃああああああああああああっ!!!!!!!」
ここここここ怖いに決まってんだろばかやろー!!
ほらみろ鳥肌立っちまったじゃねぇか!!
どうしてくれんだ雷!!
「……ぜぇぜぇ。…ああ、維奈のこと考えてたんだったな…」
雷と格闘してたらすっかり疲れたな…。
いやいやだから雷なんてどうでもいいんだよ!
問題は維奈だ、維奈!!
ほんとに遅くねぇか?
それともバイトだから遅くなってもフツーなのか…?
したことねぇからよくわかんねぇけど…。
…ガチャッ
少し遠くの方から扉が開く、あの錆びついた重い音がした。
お、帰ってきた!!
ったくなんだよー、噂をしたらなんとかってやつか?
心配させてんじゃねぇよ、…っていやいやおれ様は別に心配なんかしねーし!!
「………心配なんかしてねぇからな」
誰も聞いていないのに言い訳をして。
いつのまにか駆け足でおれは玄関に向かっていた。
「お…おかえり、維奈!!お前、夕方とか言ってたくせに遅くね?ったく、お前のことだから雨にでも降られて帰って来れねぇのかと思」
ポタ、ポタ…
…ポタ…ポタ……