三日月ロマンチカ 【短編】


センチメンタル、だっけな。


こんな風にぐだぐだ悩んで切なくなって悲観主義ぶって。


同情でもされたいのかよ。


誰もいないのに。



「……なんか疲れたな…」



身体が重たい。

眠くないのに瞼が自然と下りてくる。


おれ、このまま死んだりするのか?


そんな思いが不意に胸を過ぎった。


漠然と不安が拡がりかけたところで、絶望に似た感情がそれを止めた。



「…ま、いっか」



そうだ。


なにを不安がることがあるんだ。


こんな、身寄りもないおれみたいなやつが。


死ぬことを恐れるってか?


……家族のことを想えば十分生きた、はず、だ。


あんな惨い死に方は嫌だけど、このままいけばおれは衰弱死だろう。


腹が減ってイライラする。


…生きてていいこと、あんのかな。



「………はは…なに考えてんだろーな、おれ」



堪え切れなくなった身体がずるずるとベンチの背を滑る。


ぱたり、と。


なんの抵抗も感じる間もなく、完全に横たわってしまった。


…急に意識が霞んで、指先すらうまく動かない。


雨にばかり気が取られていたけど、よく見れば吐息が白い。


……まだ2月だもんなぁ…。


そりゃ、寒いよなぁ…。



「あー…寒ぃ…」



ゆっくり目を閉じると、あんなに重かった身体がふわふわと宙に浮いている感じがした。


暗闇の意識の中におれがぼんやりと立っている。


光が一点灯る。


なんだ?と思い、瞼の向こう側にいるおれはじっと目を凝らした。


おぼろげな光の中には大きなアルバムがあった。


その1ページ1ページが、自然にパラパラとめくられていく。

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