A Time Limit
卒業式
私が向かっているのはそう、思い出の木がある場所。
少し、緊張した面持ちでゆっくりめに歩く。
最初は走っていこうかとも思った。
けどやっぱり最後だから慎重に行きたいし、もし途中で足がもつれて転んじゃったり…なんてのは尚更やだもん。
ほぼ無心で行きたいし。
木が見えてきた。
いつも通り、周りはちょっぴり細い木々に囲まれていてその中で一本だけ安定感と迫力のある大きな木。
私は木の幹を右手でそっと触れた。
『3年間、いっぱいありがとう』
―さわさわ
その時、優しい風が吹いてきた。
まるで私に木に登ってほしいよと言わんばかりのように。
私は少しだけ微笑んでから木に登った。