A Time Limit
私はバスを降りる前に、時間の確認をした。
10:53
うん、結局はギリギリ…かなぁ?
―チャリーン
「ありがとうございましたー」
私はバスの運転手さんにお礼を言い、あのカフェに向かって歩き出した。
まぁ、もうすでにみえてるんだけどね。
―ドンッポサッ
向かいから歩いてきた人とすれ違ったときに私は手に持っていたポケットティッシュを落としてしまった。
拾おうと手を伸ばしたとき、横から知らない手がぬっと現れて私よりも先にティッシュに手をかけた。
「大丈夫?
杏里ちゃん…」
千里くん…。
笑顔を作り、ティッシュを受け取った。
「ありがとう。
大丈夫だよ」
それから2人でカフェに向かった………と思いきや、千里くんが足を止めた。
「どこか行きたいところある?」
「…………海……私……海が見たいな…」
なぜだか、そう答えていた。
自分でもわからないけれど……。
時期的には今頃海、なんて変な話だけど私の心はきっと海へ行きたかったのだと思う。
『海なんて言っちゃったから、千里くんに退かれちゃわないかな…』
私はそう思い、千里くんの顔を覗き見た。