A Time Limit
タケルの動きが止まった。
私の言葉を聞く余裕はあったみたいだ。
「杏里…
俺のこと、嫌い?」
まるで幼い子どもが母親に尋ねているかのような口調で、聞いてきた。
「無理矢理そういうことするタケルは
嫌いだよ……っ…。」
「ごめん……ごめんね杏里……。」
タケルは私の乱れた制服を直し、正座した。
―コンコン、
「杏里ちゃん、タケルと一緒に紅茶でも飲まない?」
タケルのお母さんの声。
助かった………。
「それからタケル、さっきユウコさんって子が来てたわよ。
今彼女が来てるって言ったら怒って帰っちゃって。」
「あ…あとで連絡しとくよ」
なんだかまどろっこしい言い方。
ユウコさんって誰なんだろう?
先輩とか…かな。
私はただ、純粋にそう思ってた。
あの日になるまで。