A Time Limit
「ワタル……私やっぱり帰る」
「は!?」
ワタルの目がめちゃくちゃ見開いた。
「本当に…ごめんなさい」
私は急いで席から立ち、走ってドアに向かった。
「おい!待てよ杏里!!」
ワタルの声を背中で聞きながら。
私はお店を出てからもずっと、走って走って走って、走り続けた。
どこかに向かっているつもりはなかったのに、走って辿り着いた場所は―――
私の母校。
卒業式周辺で初めてナチに会った、あの木がある場所。
なんでここに来たかって?
うん……なんで来たんだろうね。
無我夢中で走り続けてやってきた場所がこの木だなんて、なんだか笑える。
とりあえず私は昔と同じように木に足をかけて、あのポジションまで登った。