あげは蝶
閉じこもる殻

自分の殻を、破るとき

あたし

知りたかったの。


さなぎから蝶になったときの



喜びを。



あたし

知らなかったの。


さなぎから蝶になる



苦しみを。




でもさなぎにさえも

なれなくて



卵のままのあたしは

一体どうすれば



さなぎから蝶への


喜びも苦しみも

知れるのだろうか。




自分で殻をわれない


アゲハ蝶は

外の世界を知る特権も

空を飛ぶ自由も

なにもかも

与えられずに


虚しく死んでゆくだけだというのに。




殻を割るのが


怖い。

ありのままの自分を
見られるのが怖い。



外の世界に出て、
死ぬリスクを
無知なアゲハ蝶は

知らないの。



無知というリスクさえ背負う覚悟も無しに

飛び立つ
馬鹿なアゲハ蝶は


捕まえられ

一生檻にいれられて


同じ毎日を送って、後は死ぬのを
今か今かと

待つだけ。






ただただ、



待つの。


無知だから
自分の無知さが


退屈な毎日の

原因だなんて知らずに。





そして

退屈でつまらない毎日を
送って、結局は





死んで

捨てられるの。

悲しむのもそこそこに、汚いからって捨てられる。



自分の生きたいように
生きられず

なんの刺激も経験もないままで


自分も無知さを呪いながら、死ぬの。





そんな思いはしたくない。

自分で自分を捨てる行為など、したくないなら



卵でいればいい!


外の世界も羽ばたく喜びも1ミリも知らないままだけれど

自分で自分を汚して



汚く死ぬよりよっぽどいい。
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