あげは蝶
中学卒業とともに髪を
真っ黒な地味色から明るい茶髪に変えた。
雑誌を5冊も買って
研究に研究を重ねて。
「"巻き髪"……?て、なに?」
あたしには雑誌に載っている単語は全てむずかしかった。
ぐろす?(黒酢の間違い?)
ますから?(マラカスみたいな?)
びゅーらー?(はあ?)
ヘアアレ特集をみても、
れいやーをいれる?(ワイヤー?)
だんをいれる?(階段みたいな?)
しゃぎぃ?(……え。)
ぼぶかっと?(ボブさん?)
なんていう風に訳がわからなかったけど、覚えて、練習して、初めて持った携帯で自分を撮って見てみたりもした。
ゆるふわ茶髪。
つけま+マスカラ使用の目。
リップ+グロスでつややか唇。
チークを薄くいれたほっぺ。
アイラインとアイシャドーもいれてみた。
その巻いた髪をアップに
してみたり。
濃い?ってお母さんに
聞いたら全然!だって。
お母さんギャルギャルしてるからあんまあてになんないし。
とりあえず薄めにしたからまあいいか、てね。
中学時代の同級生はこの高校にはいない。
全てが全て、新しい。
新しい環境。
新しい友達。
新しい教科。
新しい先生。
新しい行事。
新しい通学路。
そして、新しいお母さんとの仲。
そして、何よりも
新しい自分がいる!
全てに胸をときめかせていた。
「鏡鏡……。」
よし!メイク問題なし!
街でナンパされるようになったのも頑張ってメイクを覚えてからだ。
性格まで変えてくれたメイクに感謝!
ガララララ……!
「おっ、おはよう!ございます…」
小さくございますを呟いた。
教室を恐る恐る見渡す。
………派手、
…派手。
派手派手派手派手!!
派手パラダイス!
自分よりも派手なひとで
溢れていた。
そんな派手なひとたちに
一気に視線を貰って、
いいような悪いような。
なんだ…
これなら全然目立たない。
数いるうちの一人ね。
よかった。