あげは蝶
生まれ変わる準備
「あげはーっ♪」
朝からガヤガヤとうるさい教室内で、一際セミみたいにあたしの名前を呼ぶ西本美和。
「な、なに?西本さん。」
あたしは少しビクつきながら西本美和に返答を求める。
「やだぁ〜、西本さんなんて堅苦しい呼び方やめてよお!あたしは美和よ。美・和!!」
西本…もとい美和は今日もキャラキャラと
あたしをこき使う為に呼ぶ。
「ごめん…み……美和、なに?」
あたしは美和の事が本当に怖かった。
学校の理事長の一人娘というだけあって、はむかったら何をされるか分かったもんじゃない。
「あのね、今日は数学の宿題とぉ、国語のレポートよろしくねんっ♪」
美和はニコリとあたしに笑顔をひとつして、ノートとレポート用紙を無理矢理腕に押し付けた。
パラ……
あたしは自分の宿題のノートを広げる。
美和のノートに宿題をうつすためだ。
あたしが宿題をうつす作業をしていると、美和がトコトコと高級な革財布を持って
こちらに寄ってきた。
「はい、これ。宿題ありがとう料金!」
美和は嬉しそうに1万円札を1枚抜き取り、
あたしの机に置く。
「え…。」
あたしが驚いていると、美和はニコリと笑って
「あれっ?!足りなかったあ?ごめんね〜、じゃあもう1枚つけるよっ?」
潤んだ瞳で
1万円札を1枚ご自慢の革財布抜き取り
あたしのノートに置く。
「やっ…やめてよっ。こんなに貰えないよ………っ!あたし別に…お金欲しいわけじゃないもの……。」
あたしは必死に美和にお金の引き取りを願う。
「ううん、これは毎日して貰ってるお礼なの。受けとって?…それに、あげはん家びんぼーなんでしょぉ?だったら尚更貰って……。これは今日のお礼と生活費だと思ってさあ。」
美和は
無理矢理あたしにお金を受け取らせると、
そのままパタパタと友達のところへ走っていってしまった。