あげは蝶
「い…いけど……。」
「やったあ!あげは大好き♪なんか奢るよ!」
しま………。
「でも…。今カレに逆恨みでもされたら…。成人くん…?だっけ?成人くんもしまを守りきれないんじゃ……。しま、男の敵作りすぎっしょ。」
「いやーん!あげはまでそんなことを!!いいじゃん、結婚してるわけじゃあるまいし交際なんて所詮ただの口約束なんだよ?…それにたくさん経験積んどいたほうがいいしね♪」
……まったく。
でもしまの言うことは
多少当たってるかもしれない。
つき合う、なんて
お互い「つき合おう」と言って始まるだけだし
所詮ただの口約束に過ぎないのかもしれない。
そうは思いたくないけど。
つき合う、ってもっと清くて清純でキラキラしてるものかと
思ってたけど全てが全てそうじゃない、って
ことなの…?
しまが正論かどうかなんて
今となってはどうでもいい
事実になってしまっているけど。
夢見がちだったの?
交際はもっと軽いのかな?
あたしって重い女?
きっと、そんなことない。
どんな交際のカタチでも
本人たちが良ければそれでいんだけど………。
とか思ってるうちに朝礼か…!
「や、ヤバい!しま!体育館行こ!…あれ?」
しまはとっくにいない。
考え事をしている間にしまはあたしを置いていっていた。
「も……やだ。」
全てにおいてあたしはしまに負けている。
可愛さも行動力もただの朝礼に気づくのだって。
しまはあたしの一つ先を
いっている人間なんだ。
「…急がなきゃ。」
体育館へと急ぐあたしの
耳には外でうるさく鳴く蝉の声しか届かなくて。
声に引きずりこまれそうになった。