あげは蝶


朝礼の内容なんて聞こえなかった。
中学の頃のあたしじゃ想像できない悪態。

あっという間に朝礼も終わってしまったし。


「あげは……?」

しまが不思議そうに顔を覗きこんできたけど、

あたしには反応できる余裕が生まれなくて。

ただただ、しまにくだらないことで嫉妬してしまう自分が嫌で仕方なかった。



キーンコーンカーンコーン…

そろそろ先生が来る時間。

あのやけに真面目そうな高橋先生?とかいうひとがくるのか。


とか思いながら机につっぷしたとき−−


「おはようございまーす。」

……あり?

これは明らかに真面目な高橋先生の喋り方じゃない…。



「えぇ!?誰ー!」

クラスの誰かが叫んだ。


「え…だ、誰よぉ。ま、高橋じゃないならいいや♪」

と、しま。


「…あ、そか。ごめんごめん。えーと、このクラスの高橋先生だけど、ご家族の都合で昨日、学校を辞めました!」

ふ、と先生を見上げる。
その瞬間、身体に電気みたいな感覚が全身に広がった。

呼吸が一瞬とまる。

この感覚は、なに。
思わず息を飲んでしまう。


「……え?えぇー!まっじでぇ?!やったああ♪」


クラスの全体が盛り上がる。

「へぇ…高橋先生よりはいい男じゃん♪狙っちゃおっかな。」


しまはふふん、とマニキュアを塗り塗りつぶやいた。


「え…しま。木梨くん?とかいうひとはどうしたの?」


あたしに一瞬不安の二文字が浮かんだ気がしたけどすぐ抹消された。


「だって木梨くんはあ、アレだよ?顔ー。顔顔!いけめんなんだもん☆」


いけめん……。

「仕方ない♪木梨くん頑張るし!先生との恋とかあ、まじヒくし!」


ははっ、としまは笑いあげた。

しまはほんと……気分屋…。


でもさっきからこの感覚は何だろう。

頭がぼんやり熱くなって熱でも出したみたい。


それに胸のあたりがなんだかぞわぞわする。


ほんとにもう…!


なんなの……っ!
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