あげは蝶


「あ…しま……。」

軽々しく
謝っとけばいい、なんて中途半端な気持ちでしまにぶつかりたくない。


「……なに?」

しまはスネたように口を尖らせながらも、いつもの頬色に戻っていた。



少し、安心できた。

それは中学時代に美和に許してもらえた、という安心とは何かが違う気がして。


高校デビュー、成功、かもしれない。

とひとり心でガッツポーズをとる。



「じゃ、ホームルームは終わり!各自解散な!」

工藤先生はにこやかに今日を締めくくる。


まだ学校なんて終わってほしくなくて。

工藤先生ともう少しでいいから一緒の空間にいたい、と思ってしまう。


……これって、ストーカー素質ありなのかもしれない。

<気持ち悪いな、あたし。>


クラスメートも各々部活や掃除に散らばる中、ガタン、と席を立ち、しまのもとへ駆け寄る。



「しま、帰ろう。話したいこともあるの…!」


ちょっと工藤先生へのストーカー心、話してみようかな。

ウケるかもしれない。


さっきの一瞬張り詰めた空気を、少しでも和らげることが出来たなら−−−。



「…んでさ、あげは、話あるんでしょう?何?」

しまは相変わらずスネたような照れてるような顔をしていた。


「あっと…えとね……!」

全てを話す。
さっきのこと、
星さんのこと、
そして、
工藤先生への気持ちのこと−−



「……え、あげは…。それってさ………その…工藤先生への気持ちってさあ……属にいう…」


固唾を飲む。

ストーカー心の表れ、だよねっ?


ガラにもあわず思わず鼻息が荒くなる。

この後ストーカーじゃん!と笑い飛ばされるときに笑うためだ。


準備OK☆


「それって……ただの恋じゃん☆!」



しまはまさにケロリ、と言ってのけた。


「ぶふっ……ふぇ?」

笑おうとしたのに、体が反射的に疑問を抱く。


工藤先生への気持ち……


恋?
はあっ!?

あたしが、恋−−−?
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