あげは蝶
「あの、ね…あんまり気を落とさないでほしいんだけど…。……あげはのクラスの楠木…しま、さん?が手首をカッターで切って…今病院に救急搬送されたらしいの……。怖いねぇ…。精神面で何か問題でもあったの?好きな人にフラれたとかさ。」
しまが……自殺?救急搬送?病院?精神面?
なんなの…。
頭がぐわんぐわんするせいか状況が飲み込めなくて。
「えっ!しま!?しまはどこの病院にいるの!」
「…えっ!知り合いのコだったの?病院までは知らないよ。」
「で、電話電話!」
焦る気持ちを抑えることなんて
これっぽっちもできなくて。
お母さんにいらだちさえ
感じるほどしまの元へ駆け付けたくてしょうがない。
まずはしまん家に掛けてみるけれど、やっぱり出なかった。
しまのお母さんとかも病院なの?!
パニックに陥ったその時。
〜♪
あたしのメール着信音が部屋に響き渡った。
急いでメールBOXを開けてみる。
メールの送り主は今日帰り際にアド交換した山田チサちゃんだった。
『あげはちゃん!
初メール早々こんなことゴメンだけど
しまちゃんが柊病院に運ばれたって本当!?』
柊……病院!
チサちゃん、ありがとう。
ゴメン、返信はできないけど、今はしまの元に行かなきゃ。
「お母さん…!行ってくるね!」
外にでると、土砂降りだった。
朝の女子アナの笑顔が売りの天気予報は、一日中晴れって言ってたのに。
「どうして…!」
こんなにも思いがけなく崩れちゃうだなんて、きっと誰も思わなかった。
だって晴れてたんだもん。
いきなり覆されてあたしを不安にさせるなんて、思わなかった。
傘は学校に置き傘してあって家にはない。
だからといってお母さんの傘を借りてる暇なんてなかった。
しま……!