あげは蝶


しまの指は暖かかった。

あたしを幾度も慰めるかのようにじんわりと
しまの指の暖かさがあたしを包んでゆく。


「しま……生きててよかった…!」

「んもうあげは…。」


ふと見るとしまの顔にも涙が浮かんでいて。

綺麗なしまの顔は歪んでいた。


「あっちでゆっくり話そう。」



しまの誘いで病院の屋上へ上った。

「……しま。」


特に意味はなかったけれど、しまの名前を呼んでみる。

「へへ……ごめんね…あげ」
パアアンッ!


気づくとあたしはしまを殴っていた。

…なにしてんのあたし。



「…痛っ。」

しまはよろりと倒れた。


「なんで自殺なんかしたの!本当に死んでたらどうするつもりだったのっ?…あたしが悲しんでも……よかったの…?」



ああ、そうか。
人に死なれるって裏切られる感覚と似てる。

自分から離れていっちゃう。

信用されてないから
頼ることもされずにどこかにいっちゃう。


そんな感覚なのかもしれない。

特にしまは初めての友達で、余計気持ちが高ぶったのかもしれない。



「ごめ…っ。ごめんなさ…っい……っ!」

しまは泣いていた。


「…ご…めんっ。あげはの気持ちなんて考えなかった…っ!あげは、こんなに心配してくれるなんて考えもしなかったの…っ自分勝手でごめん……。自分の考えだけで命絶とうとしてたなんて…っあげはがどんな気持ちだかなんて…っうっく……」


しまは泣きじゃくっていた。

「…殴ってごめん。気持ち高ぶっちゃった……。もう言わなくていいよ。しまがそう言ってくれたの嬉しいよ…。でも…どうして自殺なんか?」


しまは少し落ち着くと、
しゃべりはじめた。

ごくりと唾を飲み込む。

何とか解決してあげられるかもしれない。

「………いとこがね…大好きないとこが…いじめを苦に自殺したの……。あたしさ…兄弟いないからさ、そのいとこ……兄弟みたいに思ってて…。家も近くてよく遊んでたの。…そんないとこをいじめてた奴らが憎い!自殺に追い込んだ奴らが憎いの…!感情的になって…近くにあったカッターで……。」
< 31 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop