あげは蝶
しまの指は暖かかった。
あたしを幾度も慰めるかのようにじんわりと
しまの指の暖かさがあたしを包んでゆく。
「しま……生きててよかった…!」
「んもうあげは…。」
ふと見るとしまの顔にも涙が浮かんでいて。
綺麗なしまの顔は歪んでいた。
「あっちでゆっくり話そう。」
しまの誘いで病院の屋上へ上った。
「……しま。」
特に意味はなかったけれど、しまの名前を呼んでみる。
「へへ……ごめんね…あげ」
パアアンッ!
気づくとあたしはしまを殴っていた。
…なにしてんのあたし。
「…痛っ。」
しまはよろりと倒れた。
「なんで自殺なんかしたの!本当に死んでたらどうするつもりだったのっ?…あたしが悲しんでも……よかったの…?」
ああ、そうか。
人に死なれるって裏切られる感覚と似てる。
自分から離れていっちゃう。
信用されてないから
頼ることもされずにどこかにいっちゃう。
そんな感覚なのかもしれない。
特にしまは初めての友達で、余計気持ちが高ぶったのかもしれない。
「ごめ…っ。ごめんなさ…っい……っ!」
しまは泣いていた。
「…ご…めんっ。あげはの気持ちなんて考えなかった…っ!あげは、こんなに心配してくれるなんて考えもしなかったの…っ自分勝手でごめん……。自分の考えだけで命絶とうとしてたなんて…っあげはがどんな気持ちだかなんて…っうっく……」
しまは泣きじゃくっていた。
「…殴ってごめん。気持ち高ぶっちゃった……。もう言わなくていいよ。しまがそう言ってくれたの嬉しいよ…。でも…どうして自殺なんか?」
しまは少し落ち着くと、
しゃべりはじめた。
ごくりと唾を飲み込む。
何とか解決してあげられるかもしれない。
「………いとこがね…大好きないとこが…いじめを苦に自殺したの……。あたしさ…兄弟いないからさ、そのいとこ……兄弟みたいに思ってて…。家も近くてよく遊んでたの。…そんないとこをいじめてた奴らが憎い!自殺に追い込んだ奴らが憎いの…!感情的になって…近くにあったカッターで……。」