あげは蝶
「……ん。………らさん?…むらさん!…」
なんだろう…。
なんだか騒がしい。
むらさんて…何よ。
「…むらさん!っさむらさんっ!……笹村さん!」
……ええ!
あ…っ、あたし?!
「は…っ、はいっ。」
あたしは勢いよく立ち上がった。
後ろに倒れる椅子。
どっと沸き起こる笑い声。
う、うそー。
寝ちゃったの?!
しかも今………
1時間目終わるじゃないの!
机には自分のノートと美和のノートが仲良く並べてあった。
あ…そうか。
写してる間に昔のお母さんのこととか思い出して……寝てしまったのか。
なんてことを…。
もう!ありえない。
涙目になるあたしをよそに、先生は眉毛を吊り上げて怒った。
「笹村さん、わたくしの授業で寝るなんていい度胸してますこと。よっぽど昨日夜更かしなさったのかしら?フン、まあいいわ。後で職員室にいらっしゃい。」
いけない、1時間目は言葉が敬語過ぎてウザい、山田敬子。…先生。
通称ザマ子。
ザマス、とは言わないけれど、ザマスがよく似合う、名誉?な先生なのだ。
しかも異様に厳しいウザい奴。
職員室なんて…呼び出されたのは初めて。
黒くて七三分けにした髪を耳の下で三つ編みにして、制服のセーラー服は校則通りにきちんと着用し、もちろんスカートは膝下。
瓶底眼鏡をかけたうえ、靴下は指定の真っ白な短い靴下。
肌は真っ白で、いかにも外で遊ばないような雰囲気を醸し出している。
みんなはセーラー服とかぐちゃぐちゃに着こなしているし、みんな紺や黒の靴下。
もちろん長め。
眼鏡よりもコンタクトで、メイクもばっちり。
おまけに彼氏なんて持っちゃって、昼休みには携帯片手に屋上でイチャイチャ。
別にひがみだなんていう醜い思いを抱いているわけじゃないけれど、やっぱりそういう人とは、仲良くなれない気がする。
……こういうのを、ひがみというのか。
なーんて考えてるうちに、職員室の前に到着した。
コンコン………
ガラ……………
「失礼します。中学3年A組の笹村です。山田先生いらっしゃいますか?」