からっぽの恋
ーーーーピンポーンーーーー



私は、小さな鞄を持って

隣の部屋のチャイムを鳴らす。


マンションの最上階。

綺羅の部屋ともう一部屋ある。



綺羅の幼なじみで

同じくホストをしている

『春』の部屋。



私は、最低でも

週に一度はここに来る。

泊まるために…





返事がない。

持っていた、合鍵で

ドアを開けようとすると



ガチャガチャ



ドアが開いた。


「……あれ、もうそんな時間?
ごめん、ごめん。上がって。」

寝惚けて出てきた春。

私の顔を見ると

すっかり目が覚めたようで

慌てて私を入れてくれた。

「昨日……今日も遅かったの?」

「あぁ…大事なお客様だったから。


「ごめんね……
静かに入ればよかったね。」


欠伸をする春を見て

本当に悪かったと俯く。


「そうだよ…
何の為に合鍵渡したと思ってるの?」


奥で着替える春。

怒った口調だったから

泊めてもらえなくなると思ったら


「何回言えばわかるかな…
自分の家だと思って
遠慮しないで。」


戻ってきた春は

『ね』っと微笑み

私の額にキスをする。
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