からっぽの恋
「あぁ…寝坊した。
ごめん、ちい。もう行かなきゃ。」

春が手を合わせて謝る。

そんな必要ないのに…


いつもはちょっと話をしてから

仕事に行ってくれる。


「大丈夫だよ。
今日もお世話になります。」

「……だいたいの物はあるから。
ちゃんと御飯食べてね。
今日、出来なかったから
帰ったら話をしよう。」

やさしく微笑む春。

玄関まで見送る。


「行ってらっしゃい…優」


「いってきます。」


春は満足そうな笑みで出ていった。

春の本名は『成田 優』

最初に泊まりに来たときに
教えてくれた。

二人きりの時は

本名で呼ぶのが約束。






私は玄関のドアを見つめていた。
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