からっぽの恋
部屋に戻ると

ちいの腕を放してやる。

ちいは俯いたまま

視線を合わせない。



「心配するだろ?」

ちいの顎を持ち上げ

視線を無理矢理合わせる。

「……ごめんなさい。」

ちいは真っ直ぐオレを見つめる。

何を言いたかったか

解らなくなる。


「もういい…次からは
ちゃんと帰ってこいよ?」

「わかった。」


オレは溜め息をつくと

寝室へ向かう。


「綺羅…ご飯は?」


かすれた声が聞こえる。


「いらね…もう一眠りするわ。」


オレは振り向かないで答える。


「じゃ…買い出し済ませておくね。」


「あぁ、真っ直ぐ帰ってこいよ?」


「うん。」









オレは
















自分の事しか考えていなくて
















この時、ちいがどんな顔して



何を思っていたかなんて















これっぽっちも


考えていなかった。
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