単細胞生物
「蒼くんはいつもどこを見ているの?遠くだけじゃなくて、目の前の私も見てよ」
雪と離れて、初めて見た(もちろん視界には様々な人間が写りこんではいたが、それは自分の意図するものではなかった)女の子が菜々(なな)だった。
菜々は色んな意味で雪とは対象的であった。
少し茶色がかった健康的な肌。ぷっくりとした唇に少し高い鼻。つり目がちの二重の瞳は、雪ほどではないまでも普通より大きかった
快活で美しく、男女問わず愛されていた彼女が、なぜ僕に話しかけてきたかわからなかった。
彼女はにやっと笑って答えた。
「1人でずっと本読んでるから、邪魔したらどんな反応をするか、見てみたかったのよ。」
どうやら彼女は少しSらしい。