単細胞生物
それでも、僕の心の雪は消えないまでも、彼女のおかげで少しずつ薄れていった
菜々に話しかけられる度、僕の胸は弾んだ。
それが恋だと思った。
雪しか知らない僕は、胸が締め付けられるような感情しか知らなかったから。
無の存在が最下層にあるならば、雪はくもの上の存在であった(色んな意味で)
菜々はそのちょうど真ん中にいたのだ。
「菜々は僕を軽くしてくれる。」
「それってどんな存在よ」
ふてくされたように言ったが菜々の口角はあがっていた。
「大切だってことなんじゃないかなあ。」
何それ、と言った菜々の顔はまるで熱は発しているかのように赤かった。
僕にはそれが意図していることさえわからなかった。