単細胞生物
「蒼がいつも遠くを見つめているのは知ってた。私が視界に入っていないことも。
けど、蒼が笑顔を向けてくれる度に苦しくなる胸はどうすればいいの?
夢にまで出てくるあなたをどうやって消せばいいの?
どうすればあなたを嫌いになるの?
蒼は私が嫌いなの?」
「好きだよ。」
心臓が痛い。
「だったらどうして?
どうして離れていくの?」
「菜々は好きだよ。けど君がいう遠くの存在を、僕は忘れられない。
そこに、僕の体の一部をおいてきてしまったんだ。
それは僕の心臓を止め、呼吸すら正常にはさせてくれない。
けど、消すことはできない。
人間が体という重りを捨てられないように、心という苦しみを捨てられないように
僕は彼女を愛してる。」