単細胞生物



みるみるうちに瞳は揺れ、こぼれおちるかと思った涙は、一瞬でその奥へ消えた。




「どうして来たの?」




一段と細くなった体から、ふりしぼるように出た声。



「帰ってきたんだ。君に会いたくて」




「嘘つかないで。」




「本当だよ。」




ガシャンッ




雪ベッドの横に置いてある花瓶が割れた。いや、彼女が故意に落とした。




血だらけの腕。駆け寄ろうとした僕を、雪が鋭く睨んで制す。




思わず足が止まった。



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