単細胞生物
「違うわ、あなたは私を捨てたんでしょう?ずっと一緒に居た私から離れたくて、それで家を出ていったんでしょう?蒼はっ……」
あぁ、そうだったのか。
ついに溢れた雪の涙を見ながら、静かに思った。
雪はずっと自分が嫌われたと、捨てられたと思っていたんだ。荷物かと思っていた僕の存在は、雪の支えだったのか。
知らなかった。知らなかったんだ。
こんなにも無知な僕を、君はずっと愛していた。
僕はこんどこそゆっくりと雪に近づき、その肩を抱き締めた。
「ごめんね。僕は雪の荷物なんじゃないかと思って。僕の存在は雪の自由な未来の妨げだと思ったんだ。ごめんね。」
藍色のセーターに、ゆっくりと染みが広がる。