単細胞生物
受け付けの女性が部屋の番号を告げた後、僕をひき止めた。
「ご家族の方ですか?」
「そんなようなものです」
「蒼…さん……ですか?」
思わず目を見開き、肩が震えた。
「雪さんが、毎晩寝ている時に何度もあなたの名前をつぶやいていました。時には涙を流し、時には幸せそうな顔をして………。」
僕は黙って聞いていた。
「雪さんの入院は足の病気が原因です。それは今まで見たことのない事例で………たくさんの病院から受け入れを拒否され、この病院にたどり着きました。
明日退院です。もう……治療は何の意味もないので。」
雪を助けてという彼女の声を背中に受け、僕は気づけば扉をたたいていた。