たからもの
「1年の時と2年の時、同じクラスだったんだよ」

「へー。今年は?」

「私たちも6組なの。ね、翼」

「う、うん」

「そっか。俺は南柚葉。柚葉なんて名前だけど男!」

短髪黒髪に似合う爽やかな笑顔で、柚葉は翼の前に手を差し出し、握手を求めた。


「私は有原翼です。翼なんて名前だけど女です」

「おもしろい子だね、翼ちゃん」


握手した彼の手は温かかった。
すると途端に翼から手を離し、自らの胸を手で覆った。

「柚葉?どうした」

わずかに屈みこんだ柚葉の顔を隆人がのぞく。


顔色が悪い。わずかだけれど肩が上下に揺れていた。
運動もしていないのに、口からは息切れした声がもれる。


「また喘息かな……」


隆人が力なさ気に言い、柚葉の肩を抱いた。

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