たからもの
「有原さんは今日の放課後、暇?」

「え…うん」

「良かったら放課後、一緒に保健室に柚葉の事、迎えに行かない?」

「わ、私が!?」

「柚葉、結構有原さんの事気に入ってたみたいだし。少しでいいから話し相手になってあげてよ」


あいつは意外と繊細で寂しがり屋なんだ、と付け足す。

「私でよければ……」


少しは考えようと思った。しかし口が勝手に動いていた。
考えなくても、心のどこかでこうなる事を望んでいた。だからそう答えたのかもしれなかった。

「それから」

ふと思い出したように隆人が指を鳴らした。
パチン、といい音がする。

「な、なぁに?」

「俺の事は隆人でいいからね。柚葉の事も柚葉でいいんだよ。ほら、あいつ南くんなんて柄じゃないだろ?」

隆人は口に手を当てて、堪えるように笑った。

「南くん、って言われても俺も誰だか分かんないし」
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