たからもの
保健室
放課後になっても、隆人の周りから人がいなくなる気配はなかった。特に女子が。
隙があれば容赦なく隆人の隣を狙ってくる。
学級委員の仕事が終わって、翼はそんな女子軍団に弾き飛ばされた。滑ってそのまま尻もちをつく。
「い、痛い……」
女子軍団はそんな翼に気付く様子もない。
「ねぇ、隆人くん。今日は今から暇?」
「今からカラオケ行こうよー」
「もしかして柚葉くんのお見舞い行くの?私も行きたい」
あちこちから色々な声が飛び交ってくる。
それを見て今日香が怒りを表した。
「ちょっとあんたたち……」
それを隆人が、今日香の前に左手を出して制止する。
「ごめんね。今日は先客だから、また今度ね。誘ってくれてありがとう。柚葉にもちゃんと伝えておくから」
優しく、差しさわりなく、言葉を選ぶように女子たちを宥めた。
その場の誰もがさすがだ、と思った。