たからもの
そしてそのまま翼に手を差し出す。
「行こう、翼ちゃん。内田さんも」
息をのんでその手を掴む。思ってたよりも大きくて、思ってたよりも温かかった。
「隆人くん、私の事も今日香って呼んでよー」
「今日香ちゃん?」
「そうそう」
今日香は隆人の背中を押して、教室から出させた。翼との手は繋がれたままだ。
次の瞬間の「いつまで繋いでんの?」という今日香の声に2人は慌てて手を離す。
「行こうか、柚葉は待てない奴だから。すぐ行かないとどっか行っちゃう」
「うん……」
保健室は1階にある。
保健室の先生は、マンガに出てくるような若い美人な女性ではなく、どこにでもいそうなおばちゃん先生だった。
それでも話しやすいという事で、先生の周りには常に生徒がいる。
彼女にかかれば仮病はすぐに見抜かれる。
よって授業を保健室でサボるという事は不可能だった。
「田口せんせーい、柚葉の迎えに来ましたー」
隆人は保健室のドアからひょこっと顔を出し、その後ろから翼と今日香も顔を覗かせる。