たからもの
「待ってたわよー、古橋くん」

保健医の田口はふっくらした身体で、座っていた椅子から立ち上がる。そしてそのままベッドのカーテンに手を伸ばした。
シャー、と音を立ててカーテンが開く。
中には柚葉が帰る用意をしていた。

顔色は朝よりもずっといい。

「本当に早退しなくてよかったの?」

柚葉の荷物を持ちながら、隆人が尋ねた。

「平気だよ。どうせ今日はお昼には帰れるんだし」

「まぁ、始業式とHRだけだしな」

そう答えた隆人越しに、柚葉は翼と今日香を見つける。

「あ。朝の」

「柚葉が今朝気になってた見ないだから、連れてきちゃった。途中まで一緒に帰ってくれるって」

「ホント?」

突然無邪気な顔になる。
学校の王子様は、意外と普通の高校生だった。
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