たからもの
「ははは、おもしろいな、翼は」

「おもしろい?」

「俺の目は間違ってなかったみない」

「あの、よく意味が……」

そう話だそうとする翼を、今日香が声で遮った。

「あー、じゃあ私、翼と一緒に折笠先生に大丈夫そうですって伝えてくるね!2人は先に昇降口行っててよ」

「そう?悪いね」

隆人が困ったように笑う。

「じゃあ、行こ!」

今日香は翼の制服の裾を引っ張り、保健室から連れ出した。

「え、ちょっと今日香」

保健室から出てしばらく廊下を走った。そして職員室に繋がる階段でその足を止める。

「ちょっと今日香、どうしたの。何でまだ笑ってんのよぅ」

翼は両頬をふくらます。

「いやぁ、空気的に」

「え、私空気読めてなかったの!?」

廊下に翼の声が響く。
幸いな事に多くの生徒たちは既に下校していて、廊下にはもう誰もいなかった。

今日香は怪訝そうな顔をして、人差し指を口に当て「静かにして」の動作をした。
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