たからもの
すっかり陽に魅入ってしまった友人を見て、翼は家での弟を見せてやりたいと思った。
外では本当にしっかりしているけど、帰ればいつもスウェットで、家の中をふらふらしてる。

といっても毎日部活で忙しいから家になど全くいないのだが。

「あれ、ってことは君、有原陽?」

柚葉は何かを思い出したように尋ねた。

「まあ、姉弟ですからね。名字は同じですよ」

そこは「はい」でいいだろう、というのが姉心だが黙って行く末を見届ける。

「野球部?」

「そうですけど」

「愛海の有原陽……」

柚葉より先に隆人が思い出したようだった。
両手を叩いてパン、という音を鳴らす。

「去年の夏の甲子園で、速球派の1年生エースって注目された……あの!?」

「注目されたとか、速球かは分かりませんけどね。あなたの記憶が正しければ、あの有原陽です」


テンション高めで話す柚葉とは対照的に、陽は淡々と話した。
いつもこうだ。

相手がどんなに感情的になろうろも、いつもクールに話し、ポーカーフェイスを崩さない。
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