たからもの
相手は学校の貴公子様だ。
その相手が地味な女の子だったら、誰だって文句を言いたくなるだろう。

しかし普段話しているうちに、彼が学校の貴公子だという事をすっかり忘れてしまっていた。
隆人が、思っていたよりもずっと普通の高校生だったからだ。

「あ、そうそう。柚葉が言ってたんだけど」

隆人は歩いていた足をパタリと止める。

「今日香ちゃん、来週誕生日なんだって?」

「あ、そうだよ。5月19日」

「柚葉が今日香ちゃんの誕生日に、サプライズパーティーしたいって言うんだ。それで翼ちゃんにも協力してもらいたくて。どうかな?」

「あー、当日はダメかもしれない」

「ん?」

翼の思いがけない返答に首を傾げる。

「私、今日香にね、毎年誕生日パーティーしたいって持ちかけるんだけど、当日はダメだって言うの。家族で過ごすからって。だから去年も一昨年も、パーティーしたのは18日」

「へー。今日香ちゃんはそういうのは友達と過ごすタイプだと思ってた」

「私も。だから私、今年も18日って事で企画立ててたんだけど」

「協力させてよ。今年は3人で頑張ろう?」

「い、いいの?」

「いいよ」
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