言えない愛と小さな世界。
「また、お前かよ」
そんな言葉を吐き出しながら、姿現したのはいつも不機嫌そうなあいつ。
髪は綺麗な銀色一色。
そのくせ瞳は鋭く真っ黒で。
耳に見え隠れするピアスの数ははんぱないし、大分ゆるく着こなす制服はもはやボタンが止まっているのかもわからないほど。
一番簡潔に言うとしたら、
...不良ってやつ。
「ここ、あたしの教室だもん」
「あ?俺だってここが一番誰も来なくて居心地良いんだよハゲ」
...あたし、はげてないし。
むしろ、あんたのが...と、思ったところで急いで思考を停止した。
どうやら、不良はあたしの頭の中が読めたらしくぎろりと視線だけで睨んでくるんだもの。
...何とも恐すぎる。いやいや、まじな話。
「...眠み」
それから、何事もなかったかのように一言そう呟いていつものように不良はあたしの座る前の席に俯せて寝た。
――あたしは、それを確認するとまた夕焼けに包まれる運動場に視線を移した。