愛と孤独の果てで
静寂
「ただいま。今日も暑かったなぁ。」
裕也が仕事から帰ってきた。 
「あなた、お帰りなさい。ご苦労様。お風呂入ってきたら?」

「あぁ、ちょっと話があるんだが……。」

裕也の顔が少し曇っている。 
「?なぁに?」

「先に風呂に入るよ。」

「えぇ、分かったわ。」

美奈は不安そうな顔をして夕飯の用意をした。

裕也が風呂から上がって食卓についた。 

「あなた、お話って?」

「あぁ、実はな、しばらく九州にある本社に単身赴任をしなくちゃならないかもしれないんだ。」

「九州!?そんな…ここは京都よ?遠すぎるわ。」

「一緒に来て欲しいが、お前は実家の両親が気になるだろうし…。」

美奈の両親の父親は脳梗塞で倒れて以来寝たきりだ。それを美奈の母親が面倒を見ている。 
母一人では面倒を見るのが大変なため、美奈は週に何回か実家を訪ねていたのだ。 

「えぇ、心配だわ。あなた、単身赴任の話断ったり出来ないの?」 

「……俺も断りたいんだが、本社の方は是非にと俺を指名してきたらしい。」 
「……そうなの……。どれくらい単身赴任しないといけないの?」

「短くても4、5年は九州に居ないといけないみたいなんだ。」

「そんなに!?長すぎるわ。私一人でこの家にいるの不安だわ。」

「……そうだな。もう一度社長に話してみるよ。」

「えぇ、お願い。」


その日は口数少なく二人は就寝した。
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