Memory
俺はその場に居るのが辛くて
2人の前から逃げ出したんだ。
「宏揆。岡崎君のこと、どーして何も教えてくれなかったの‥?」
「‥‥杏子?」
学校の門を出た所で杏子が涙目で俺を睨みながら問いかけてきた。
何で杏子まで知ってんだよ‥。
そう思ったのが顔に出てたらしく
杏子は前に屋上で潤がしたみたいに俺の制服の裾を握りながら俯いた。
「美羽と帰ってたら宏揆の声が聞こえたんだ‥。
それで、美羽が真っ先に出て行っちゃったから‥出るに出れなかったって訳」
「あぁ‥だからココで待ってたって事か」
杏子が頷いたのを確認して
俺は杏子のサラサラな髪の毛をクシャっと撫でた。
「宏揆が先に来てくれてよかった‥かも」
「‥‥そっか」
杏子が顔をあげた瞬間一瞬ドキってした。
杏子が泣いてる‥。
俺は杏子の涙を初めて見たかもしれない。
「‥‥‥最低だよね」
杏子は静かに涙を零しながら呟いた。
俺は杏子のそんな姿に何も言えなくなってた‥
それでも杏子は話だした。
「私ね‥岡崎君のこと知った美羽が宏揆達の方へ行った時‥ホントは一回美羽のこと止めたんだ‥。」
「‥‥‥」
「行かないでって‥」
その言葉を境に杏子の涙は次々と落ちていく。
「最後に1番悲しくなるのは美羽なんだよって‥
でもね‥美羽はそれでもいい‥、
富澤君だって諦めてないじゃんって言ったんだ」