クロネコ彼氏


「源氏物語の四帖……最初の文、斎藤読め」


先生の芯がある声が飛ぶ。

そして指された斎藤さんは、席をたってすらすらと読み上げる。



「うき夜半の、悪夢と共に、なつかしきゆめも、あとなく消えにけるかな……」

「はい、次」



先生の声を聞いて斎藤さんが座り、その後ろの人が席をたつ。



「……」


わたしはちらりと教科書を見て心の中でため息をついた。


源氏物語は好きな方じゃない。

というより理解できない、の方が正しいかも。



…例えば、源氏。


第四帖で源氏は、六条御息所、ていう美しく恋人がいたのに、

夕顔っていう女性にのめりこんでいく。



…ひどい、って思った。

六条御息所が可哀相だと今でも思ってる。



< 27 / 105 >

この作品をシェア

pagetop