クロネコ彼氏
「源氏物語の四帖……最初の文、斎藤読め」
先生の芯がある声が飛ぶ。
そして指された斎藤さんは、席をたってすらすらと読み上げる。
「うき夜半の、悪夢と共に、なつかしきゆめも、あとなく消えにけるかな……」
「はい、次」
先生の声を聞いて斎藤さんが座り、その後ろの人が席をたつ。
「……」
わたしはちらりと教科書を見て心の中でため息をついた。
源氏物語は好きな方じゃない。
というより理解できない、の方が正しいかも。
…例えば、源氏。
第四帖で源氏は、六条御息所、ていう美しく恋人がいたのに、
夕顔っていう女性にのめりこんでいく。
…ひどい、って思った。
六条御息所が可哀相だと今でも思ってる。