クロネコ彼氏
“俺の彼女でいて”
って、そんなこと言われたら断れない。
ううん。
多分、断る気なんてない。
だって、“まだ彼女でいたい”って思ってるわたしがいる。
“別れたくはないよ”って、思ってるわたしがいる。
どうしてだろう?
今日彼女になったばかりなのに。
「でも、だけど……
わ、わたし、黒川くんと一緒にいたい」
そう小さな声で、
でも、はっきりと言ったら黒川くんは驚いていた。
……けど、すぐに嬉しそうに目を細めた。
それだけで、わたしの心臓は、きゅううう、と締め付けられて。
“知りたい”って思った。
だって黒川くんのことも、
この締め付けられる胸も。
分からないことだらけだから。
「よろしく、伊織」
黒川くんの、妖艶な声が鼓膜を揺らした。
わたし、中川 伊織。
今日から黒川くんの彼女です。