通りすがりのイケメンさん
それでもこちらを向かず。

今くらいの声を出せば

さすがに気付くはず。

少しおかしいとは思ったけど

聞こえてないんだったらしょうがない。

今度はもっと大きな声を出して

呼んでみよう。

「あの!!!「うるせぇ」

おぉ。返事した。

「お前なぁ、ここアパート、

壁薄いの、隣の人に聞こえるの、

お前がそんな声出したら俺が怒られんの」

「・・・はあ」

「お前分かってんのか?

隣の人マジでうるせーばばぁなんだかんな」

「・・・はあ」

「そんな腑抜けた声で分かってんのかよ。

 大体俺は『あの』じゃねぇ」

「・・・はあ?」

「お、ちゃんと聞いてんのな。

語尾が上がった」

「はあ」

「おお、今度は即答・・・って

論点がずれてる」
< 12 / 45 >

この作品をシェア

pagetop