通りすがりのイケメンさん
話題が突然途切れて、2人の間に沈黙が訪れる。


40秒くらい経った時。



「名前は」

「・・・え?」

「名前は何だ」

「花谷(ハナタニ)・・・美咲(ミサキ)」

「美咲か、いい名前だな」

「・・・あなたは?」

「ん?」

「・・・あなたの、名前」

「・・・俺の名前は・・・神崎 優輔(カンザキ ユウスケ)だ」

「〝ゆうすけ〝ってどういう漢字?」

「〝優〝しいに車へんの〝輔〝」

「へぇ・・・いい名前」


あたしは口角をあげる。


「・・・やっと笑った」

「・・・へ?」

「俺がここに来たときから、

ずっと悲しそうな顔してた」

「・・・」

「でも今は少し表情が明るくなってるし

足だって崩してる」

「あ」


ほんとだ。

思わず足を見る。

家のことも忘れてた。

・・・あたし、お姉さん座りしてる。

あたしがこの座り方をするのはリラックスしてる時だけ。

・・・・・・ってことは・・・

顔を上げると目が合った。


「・・・なぁ」

「ん?」

「家出は終わりでいいんじゃないか」

「・・・・・」

ケータイのサブ画面を見ると。

只今、22:54。


思わず俯く。


「どうしても帰りたくないか?」


少し間を置いて、コクンと頷く。


「まいったなぁ・・・」


困ったような声が小さく聞こえた。


「・・・帰っていいですよ。

・・・あたしもうすぐ帰るから」

「分かりやすい嘘をつくな」

「・・・あたしのことは気にしないで」

「駄目だ」


神崎優輔はあたしに

〝有無は言わせない〝とでも言うように

声を低く、強くして呟いた。






沈黙が続く。


すると。


「なぁ・・・お前・・・・・・


・・・・・・俺んち、・・・来るか・・・?」


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