あい
わーすと わん
『あんた、ストーカー?』
金色の髪が揺れた。
突然のことに思考回路は止まってしまって、あたしはきっと、とても間抜けな顔をしていただろう。
薄暗く閉鎖的な階段の上から、彼女は鋭い眼差しであたしを見下ろした。
カツン、と
ヒールの音が響く。
あたしは何をしているのだろう、とようやく我にかえろうとした。
『あんた、名前は?』
『……小林、愛』
カツン、カツンと
高いピンヒールを規則的に刻みながら
彼女があたしの目の前に立った。
『愛。奇遇ね。
あたしも″あい″っていうの。』
そう言って、彼女は鞄の中から煙草ケースを取りだし
その細い指に煙草を挟み、カチンと綺麗に響くライターで火を点けた。
一息、ふぅーっと息を吐き出すと、
まるで馬鹿にしたかのような笑みをあたしに向けた。
『まあ、とは言っても、あなたとは対称的な名前だけどね』
耐えきれなくなった灰が、ぽさっと地面に落ちた。