あい
『みっくん、おはよー!』
開けた扉の先。意外に広々とした玄関が広がっていて、ただの事務所かなにかだと思っていたわたしは、そのまるでどこかの家かのような内装に驚いてしまった。
彼女は何も言わず、玄関で靴を脱ぐと足早に奥の部屋に入っていってしまい
入っていいものか、と
躊躇いそこから動けずにいる。
どうしたものか。
きょろきょろと視線を動かしていると、靴箱なのか、その台の上に飾られていた写真立てが目に留まった。
彼女、あいとその隣に寄り添う一人の男。どこか二人の目元が似ているような気がした。
『なにしてんの?』
ぼうっとその写真を見ていると、奥からひょこっと顔を出したあい。『はいっといで』とだけ言うと、また奥の部屋へと戻っていってしまった。
ブーツのチャックをおろす。視界がいきなり、低いものになった。
きちんと二足並べ、あいの入っていった部屋へとのそのそと足を運ぶ。
それに連れて聞こえてきた雑音。
ああ、やっぱり、と
その音があたしの中での"そうかもしれない"が確信へと変わった。