あい


扉を開け、部屋を覗く。


そこからはまた、曖昧に仕切られた部屋が2つ。


片方、私の目が先にとらえた側には長ソファーが2つ。テーブルを挟むように置かれたそれらの奥に、作業デスクなのか


パソコン3台が乗っているデスクがある。その奥の回転椅子のようなところに、あいと男が一人座っていた。



『君があいちゃん?』



それはさっき見た、写真の中に映っていた男だった。



『はい』


『うーん、全然こっちとしては有難いんだけど………


おんなじ名前ってのもなあ、あい?』


『名前なんていくらでも決めれるじゃない

よさそうな子でしょ?まあ、人をストーキングするくらいだから、内面の保証まではできないけど』


くすくす、と笑うあい。


いきなり繰り出された会話に頭の中にはハテナがいくつも上がった。


厳密に言えば、困惑したような顔つきをしてみた、だけなんだけど。



『あの』


『なに?』




"なんの話をしてるの?"




だけど、その言葉はあいの目付きが飲み込ませた。



『あんた素人?』


『………はい』




普通なら、なんのことか分からないのかもしれない。以前に、普通ならこんな薄気味悪いビルになんか入ろうともしないかもしれない。



『こっちの業界が、よね?


水?』



知らない人はたしかに知らない。だけど知っている人はよく知っている。



ここ一体のビルが


風俗ビルだということを



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