ガラクタのセレナーデ
障害者職業訓練所『若葉園』に、新たに『夏目 真(ナツメ シン)』という名の青年が入所した。
真は、先天性の知的障害がある為か、22歳という年齢にしては幼く見えた。
取り敢えず、施設に馴染むまでは軽作業をと、真は、ダウン症の女性や、軽度の知的障害のある女性が働く部署に配属された。
その部署の担当は
菊島 いろは(キクシマ イロハ)であった。
いろはは短大を卒業後、この施設に就職し、この4月でちょうど六年になる。
いろはは、肩甲骨を隠す程度のストレートの黒髪を、無造作にいつも後ろで一つに束ねていた。
その上、常にジーンズにパーカーといった、ボーイッシュな服装。
悲しいことに、一般的な二十代半ばの女性が持つ色気など、全く持ち合わせてはいなかった。