ガラクタのセレナーデ
 いつからそこに立っていたのか……
『もしかして、今の話聞かれた?』といろはは不安になる。

 だが、いろはを見下ろす真の顔は、無表情で感情が読み取れない。


 大丈夫、聞かれていないと自分に言い聞かせ、いろはは席を立った。

「こらぁ! かっちゃん、裕子さん! また真くんの隣の取りっこでしょぉ?
 だから、真くんを真ん中にすれば、二人とも真くんの隣になれるっていつも先生言ってるじゃない」
 言葉はやや乱暴だが、いろはの口調はとても優しい。

 言いながら、いろはが言い争う二人の元へと向かうと、
「だって、真くんはふちっこがいいって……」
 裕子がそう言って泣き出した。


 いろはが振り返ると、真は視線を逸らすように、俯いてしまった。
 いろはは真の肩に右手を優しく触れ、
「そうなの?」
 と聞いた。


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