彼の失敗は言えなかったこと
人は過ちを繰り返す
最悪。なんでこいつなんかと……。
「そんなに睨むなよ。ベッドで密着するよりいいじゃんか」
キャスターの付いたイスに座り、左手に持つコーヒーをすする航(わたる)。
なんでこいつはこんなに落ち着いているのか……。
「お、やっぱり先生方は良いもん飲んでんな。インスタントだけど」
なんでこんなに……。
「ほれ、ストーブが点くまででもあったまるぞ」
「あんた、わかってるの?」
「備品の無断使用についてか?」
「そんなのは取るに足らないじゃない。この状況よ、“この状況”」
苛立つ。当然だ。
深夜、学校に閉じ込められた上にこいつと二人きり。
これ程、最悪な状況はない。
「焦ったってここからは出られない。外へ通じる窓や扉の鍵を、迂闊に開けようとしたら警報が鳴るだろう。
今は期末テスト制作期間。教師や警備員に見つかれば、良くて謹慎、最悪退学か。はっは、参ったね、こりゃ」
湯気が立ち上るマグカップをデスクに置き、ニヒルに笑う。
なんでこいつはこんなにも落ち着いているのか、理解出来ない。いや、理解したくない。
「お、っと。ストーブがついた。暖まりなよ、女の子が身体を冷やすものではない」
こんなやつのことなんか。
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