彼の失敗は言えなかったこと
そういえば、こいつは昔から自分にとって肝心な事は言わない癖がある。
負けず嫌いな性格からだろうが。
「あんたこそ、その生き方疲れない?」
「疲れたよ。だけど性分でね、この性格は変えられない」
「つまらない」
「そう言われてもなぁ」
嫌味が通じない奴。満更でもなさそうな笑みが、ますます腹立たしい。
再び左手でカップを持ち、冷めたコーヒーを口へ運ぶ。
「……?」
ふと気づいた違和感。でも何に対する違和感かわからない。喉に引っかかる小骨のよう。
何か引っかかるが、気にしないようにした。