彼の失敗は言えなかったこと
「さて、そろそろ寝よう。朝一に起きて、ここを出ないとだしな」
ベッドは窓際、真ん中、壁際の三つ。そのうちの壁際に私がいる。
「あんたはどこに寝るのよ」
「俺はそこのソファーでもいいぞ。嫌だろ? いくらカーテンで視界を遮っても、隣に俺が居るんじゃあ」
「あら、よくわかってるじゃない」
なんでそういう所はわかるのに……。あの時……。
「布団は起きたときに戻せばいいか。起こされるのが嫌なら、先に起きとけよ~」
面倒なのか左手だけで毛布を持ち上げ、ソファーの上へ放った。
右手も使った方が楽だろうに。
「言われなくても……」
カーテンを閉め、一人呟く。
聞いてはくれていないだろうから。