彼の失敗は言えなかったこと
「っち、痛いとこはないか? あかり」
気がついたら、横たわる私の下にあいつが居た。
「え、うん。ありがとぅ、航。っ!? 航、腕!」
「右だろ? 痺れてさ、動かせないし、力入らないしでヤバイかも」
助ける時に右手をどうにかしたらしく、可笑しな方に曲がっていた。
「きゅ、救急車だよね!? 110番!」
「それは警察。というか、骨折ぐらいじゃあ、タクシーでいい」
車はもういなかった。通行人も影すらなかった。
それでも私は動揺する気持ちを必死に抑えて、助けを求めた。
あいつも声をかけてくれてはいたが、私の耳には届いていなかった。