彼の失敗は言えなかったこと
ひき逃げされた翌日。あいつの病室へ急いだ。
前日から居たかったのだけれど、それは無理だ。
「お前、さすがに早過ぎないか?」
面会の許される13:00ジャスト。
扉を開ける私を、驚いた様子であいつが見つめてくる。幸い他の患者さんは居なかった。
「学校どうしたよ。優等生」
「さぼった」
学校なんてどうでもいい、そう思えた。
「おい、たかが骨折なんだから、んな気ぃ使うなよ」
「でも、私を―― 」
「自惚れんな」
遮られた。予測でもされていたらしい。
黙り戸惑う私を見、あいつは続けた。
「やろうと思えば骨折じゃなく、かすり傷程度には出来たさ。ただ、それを俺が勝手に怠っただけだ」
「それでも私が車にさえ、気づけてればよかった」
「そうだな。次からは手を挙げて、右左右だな」
「ちっちゃい子じゃないんだから。左右確認」
どんな時でも、他人を元気付けられるあいつが、何よりも好きだった。
「骨折が治るのは4週間後だと」
「入院期間は?」
「明日まで様子見るそうだ」
「そか。じゃあ、しばらくは住み込むね」
「マジすか……?」
「家事とお風呂どうすんの」
「……お願いします」
「任せなさい」
関係が崩れるまでは、ね。